2012年6月12日火曜日

保守化か?それとも経費節減?

   オランダに行く目的の第一は,公文書館での資料集めです。毎回訪れるオランダ国立公文書館(Nationaal Archief)は,デン・ハーグ中央駅のすぐそばにあります。今この駅は大改装中で大変騒々しいですが,公文書館の中は以前と変わらず平穏で静謐です。
   最近,といっても,聞けば1年以上前からだそうですが,ここのホームページが大きく変わりました。内容的にどう詳しく変わったかはわかりませんが,少なくとも見た目は大きく変わり,なんといっても英語の情報量が少なくなったように思います。
   これまではオランダ語版の情報量と英語版の情報量にそんなに大きな差は感じませんでした。もちろん実際は当然オランダ語版の方が情報量は圧倒的に多かったはずですが,少なくとも必要な情報にたどり着くまでは,英語版で十分だったように思います。
   オランダの会計を勉強しながら,こんなことで不便になったと感じるのも恥ずかしいですが,やはり英語の方がずっと楽だったので少々面食らいました。また,以前なら,オランダ国内すべての公文書館で通用する共通カードをホルダーに差し込めば,すぐに必要な情報が入力できたのですが,今回は手入力でした。
   そんなことも知らなかったので,カードの更新を申し出たらもう使えない,記念にとっておいてくれとといわれ,すごすごと定期入にしまいましたが,数年前アムステルダムの地方公文書館までいって作ったカードで愛着がありますので,お言葉に甘えて大事に持って帰りました。
   しかしどうしてこんなに変わったのか。英語版が貧弱になったのは,保守化なのではないかと疑ってしまいました。つまり,オランダ語のできないやつはオランダに来るな,住むな,仕事をするなといった風潮が出てきたのかと心配になったのです。
   そこでライデン大学の院生の方に聞いてみると,そういうわけではなく,財政上の問題ではないかとのこと。つまり,2倍手間かけて英語版を作る余裕が今ないということらしいです。オランダはヨーロッパのなかでは財政状態が良いほうだと聞いていたのですが,結構,締めているようですね。
   そこでネットで探してみると,昨年末頃,この公文書館が,隣にある国立図書館(Konikelijk Bibliotheek)と近く統合されるというニュースが流れていたようです。詳しい事情は分かりませんがどうやら経費節減のための合理化という側面があるようです。
   今,日本では,国も地方も財政破綻が懸念されていますが,まっさきにこういう公共の施設,しかも文化芸術にかかわるところから予算削減の対象になるというのは,古今東西変わらないようですね。少し寂しい気もしますね。

橋本