2011年12月18日日曜日

オランダ・ワンダーランド(第3回:オランダの自転車事情)

    オランダは自転車王国です。オランダの正式名称はネーデルラント王国(Koninkrijk der Nederlanden)ですが,ネーデルラントは低地という意味です。国土の多くを干拓して作ってきました。それゆえ,「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」といわれます。実際,国土の4分の1は干拓地です。
   有名な風車はその水のくみ出しに使われていたのです。ですから山が無い。フラットな国土なので自転車がもってこいなのです。夏などはポルダー(干拓地)の中のどこまでも続く道をサイクリングする人をよく見かけます。
   最近日本でも,エコやヘルス,あるいは,大震災時に帰宅難民が多く出たことから自転車の利用が見直されちょっとしたブームですが,一方で,歩行者との接触事故や,ピストと呼ばれる競技用のノーブレーキ自転車の摘発といった記事をよく目にするようになりました。
   自転車王国のオランダではどうでしょう。私がオランダにはじめて行った10数年前,オランダの自転車にはほとんどブレーキがついていなかったように思います。オランダ人が皆が皆ピストに乗っているわけではありません。普通の自転車にもついていなかったのです。普通のと書きましたが,フレームもタイヤも日本のものよりずっと頑丈ででかいのです。オランダ人男性の平均身長は180センチを超え,女性も170センチを超えていますし,石畳が多くやわなフレームやタイヤでは耐えられないのかもしれません。
   止めるときはどうするのか。そこは長い足が役に立ちます。バッと伸ばせばたくましい足が地を踏みしめ踏ん張って自転車は止まる。あるいは,腕に力を入れ思いっきりハンドルをねじって,前輪を進行方向に直角にしてガガガッと止める。ダイナミックですね。
   しかし最近は,ブレーキのついたものが増えたように思います。法改正があったのかもしれません。変わらないのは,少し細めの綱引きの綱ほどの太さもある鎖の鍵です(想像できますか?)。オランダは自転車の盗難も多いのです。だからその防止のためですが,それにしてもこんなに太くなくても良い鍵があるじゃないかと思いますし,実際売ってもいるのですが,皆好むのはこの太いやつです。
   さて日本とのもっとも大きな違いはどこかといえば,それは自転車専用道路があることです。街中には,歩道,自転車道,車道と三つが並行にあります。だから安全。なれないうちは知らぬうちに自転車道に入り込んで轢かれそうになったことはありますが。 信号も三者でシェアしますから,歩行者はカタカタカタカタ・・・・・という効果音にせかされて30秒ほどでわたりきらねばなりません。慣れればなんということもないのですが,最初は戸惑いましたね。
   この道の整備には数百億円単位のお金をかけたそうです。これはすごいですね。日本はワークシェアリングなどでもよくオランダを手本に議論をしてきましたが(この件はいずれまた),こういった政策を実行するにはコストがかかるのだという覚悟を決めてからやらねばなりません。法律を変えて自転車を車道に移すだけではなく,ちゃんとインフラも整備して,そのためのコストを国民自身が負担する覚悟も必要なのではないでしょうか。

橋本

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